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不当判決

227億円の証券会社の詐欺と役割を拒絶する投資者保護基金とズサンな裁判
目次

投資者保護基金

投資者保護基金は、証券会社の破たん等があった際に投資家を保護するためのセーフティーネットとして設立された機関である。日本だけでなくアメリカやイギリスにも存在し、一般投資家を守る事を目的としている。これは金商法の中でも明記されており、金融商品取引法第79条の21の条文(e-gov法令検索へのリンク)にて設立の目的が下記のように記載されている。

投資者保護基金は、第七十九条の五十六第一項の規定による一般顧客に対する支払その他の業務を行うことにより投資者の保護を図り、もつて証券取引又は商品関連市場デリバティブ取引に対する信頼性を維持することを目的とする。(金商法 第79条の21)

基金は、金商法で定められている唯一の投資家を守る機関であり、全ての証券会社は加入が義務付けられている。これは、証券会社が倒産した場合に備えてのもので、例え証券会社の資産がなくなったり債務超過に陥っても、投資家の資産を流用されるべきではないのだが、実際に投資家のお金を動かすのは証券会社であるから、投資家の資産がなくなる事はあり得る。(2000年に起きた南証券では証券会社の社長が投資家のお金を自分のお金として使ってしまっていた)

こういったケースがあり得るため、投資家の資産を保全すべく基金は上限を設けて補償する事が金商法で定められている。(1000万円まで)

例えば、トヨタ自動車の株券を証券会社AにてX氏が購入し、その後に証券会社Aが破産した場合、X氏のトヨタ自動車の株はあくまでもX氏の資産であるため、X氏にきちんと戻ってくるべきである。しかし、証券会社が預かっているX氏の株を勝手に売却して他の会社の返済に充てられる事もあり得る。こういった事が起きた時に、X氏の損害を補償すべく設立されたのが投資者保護基金である。

ここで重要になってくるのが、「分別管理」と言うもので、証券会社には投資家のお金を悪用したり流用したりできないように、お金を別に管理しなさいと言う義務がある。理論的には分別管理で信託会社等にお金を移しておきさえすれば、証券会社は投資家の資金の流用が出来ないはずで、これがされていない場合は基金が投資家にお金を補償します、と言うものである。

今回の事件では、アーツ証券は信託会社に投資家の資金を一度預けている。これをもって「分別管理」をされたとして、基金は補償をしないとしている。しかし、これは確実におかしく、分別管理の先に送られた投資家の資金が証券会社による詐欺スキームによって流用されているのが刑事事件の証拠から明らかにも関わらず、投資家のセーフティーネットとしての機能を拒否しているのである。

2000年に起きた南証券の詐欺の裁判においては、最高裁判決として下記が出ている。

「投資者保護基金は、会員である金融商品取引業者が顧客資産の返還に係る債務の円滑な履行をすることが困難であるとの認定をした場合に、認定金融商品取引業者の一般顧客の請求に基づいて、一般顧客が認定金融商品取引業者に対して有する顧客資産に係る債権であって認定金融商品取引業者による円滑な弁済が困難であると認められるものにつき一定の金額を支払う等の業務を行うことにより投資者の保護を図り、もって証券取引に対する信頼性を維持することを目的として謝けられたものである (最高裁判所平成18年7月13日 第一小法廷判決 。民集 60巻 6号 2336頁参照)。」

これから見ても分かるように、「分別管理」についての記載はなく、一般顧客の請求に基づいて円滑に顧客資産を返還するように示されているのみである。

また、投資者保護基金の制度設計として、分別管理が成されていれば基本的には資産を投資者保護基金が回収できるため基金に損害を与えずに顧客資産を返還できる、と言う考え方は理解できなくてはない。しかし、今回のような証券会社社長による詐欺スキームでは、スキーム外に分別管理しなければ意味は無いのである。

そう言った管理の意味合いを無視して、証券会社単独の「分別管理」がされているかいないかを理由にして補償の是非の議論を裁判でしている基金の考え方は理解に苦しむ。

なお、投資者保護基金制度については、海外の事例も含めた研究会が公益財団法人 日本証券経済研究所にて行われている。下記は、当該制度の内容である。

日本証券経済研究所による投資者保護基金制度の会合